以前に、初めて不妊相談に来られたお客様から、こんな事情をお聞きしました。

てんかんを持病でもっており、婦人科で、こう言われたそうです。
「てんかんがあるから、赤ちゃんは諦めてください・・・・」

なんて無責任な発言でしょうか!
ほんとヒドイ会話だと思いました。

この方は実際にしばらくの間、子作りを諦めていた感じで、それでも諦めきれなくて、当店に相談にきたようでした。
当店でも、「妊娠は諦めてください」と言われるだろうと不安に思って来店したと、最後に教えてくれました。

確かに「てんかん」のある方は、赤ちゃんの奇形のリスクは上がります。
母子ともにリスクはあるかもしれませんが、それでも奇形児のリスクは多くて11%くらいと思います。
逆に考えると79%強くらいの方は、健康な赤ちゃんを出産しているのです。

リスクの高い妊婦さんの、受け入れ施設が全国的に数が少ないこともあり、安易な妊娠を控えたい医師の気持ちもわかりますが、子供を授かりたいと思うご夫婦の気持ちは、誰にも止める権利はないと思います。

これからは、患者さん自身が、「てんかん妊娠」の正しい情報を持つ事と、医者側も正しい情報を持つことが必要でしょう。

もちろん薬剤師である私が、完璧かと言うと、そうでもないのですが、困っていて相談されたら調べて、勉強して正確な情報を伝えてあげたいと思います。

てんかんを専門とするお医者さんも全国には多数いらっしゃいます。
妊娠させてあげたいと思ってくれる、よきパートナーと出会い、あなたに赤ちゃんが授かれることを願っています。

そこで、「てんかんと妊娠」についての情報です。

「てんかん」をもつ妊婦さんから生まれた子供の奇形頻度は、11.1%という報告があり、一般人口あたりの頻度では4.8%と比べると、確かに高めではあります。
(抗てんかん薬を単剤投与最小限投与であると、一般と変わらない4.8%というデータもあります)

つまり妊娠前から、てんかんの薬の調整は考えていく必要があります。
てんかんの薬をもらっているお医者さんに、妊娠を希望している事を伝え、薬の減量や、可能なら中止も検討します。

抗てんかん薬が必要な場合でも、数種類を使うのではなく、単剤使用で試します。

「てんかん」をもつ方の妊娠に対するガイドラインでは、薬はトリメタジオンは使用せず、バルプロ酸投与が必須の例では徐放剤が望ましいと書かれています。

また単剤での投与量の目安は、一日量でバルプロ酸は1000mg以下(血中濃度は70μg/ml以下)、カルバマゼピンは400mg以下、フェニトインは200mg以下が望ましいと書かれています。
バルプロ酸とカルバマゼピン、バルビツールとカルバマゼピンまたはフェニトインとの併用はさけるとよいようです。

抗てんかん薬の併用(組み合わせて使うこと)で、奇形頻度が著しく高まる報告がありますので、注意が必要です。
また一部の抗てんかん薬では、血中葉酸濃度を低下さる事がわかっていますので、妊娠希望の場合は、葉酸のサプリメントで、葉酸補給もしておくといいでしょう。

奇形発生率は「抗てんかん薬」の用量薬剤数に比例し、妊娠第1期に抗てんかん薬を服用していた人の平均は11.1%と言われています。

抗てんかん薬ごとの奇形発生率は報告によって異なるが、単剤治療ではプリミドン14.3%、バルプロ酸11.1%、フェニトイン9.1%、カルバマゼピン5.7%、フェノバルビタール5.1%。奇形の種類については、口唇裂、口蓋裂、尿道下裂が多いが、バルプロ酸とカルバマゼピンでは神経管欠損(二分脊椎)、バルビツールは心奇形との関連が注目されているようです。

新規の「抗てんかん薬」については、まだデータ数が不十分であるが、従来薬よりも奇形発生率が低いとされています。

神経管欠損(二分脊椎)の奇形異常は、葉酸の補給で予防が期待できます。
日本ではてんかんをもつ妊娠可能女性に対して非妊娠時は0.4mg/日、妊娠時は0.6mg/日の葉酸摂取が推奨されています。

奇形発生率は妊娠4~16週に高いため、その期間は抗てんかん薬の血中濃度を低く維持し、発作が増えても軽度な部分発作のみで二次性全般化のおそれがなければ、抗てんかん薬の追加・増量をしないと報告があります。

しかし、全身強直間代発作は切迫流産、早産の原因となりうるため、16週以降は発作の再発防止を優先し、必要があれば薬剤の追加・増量を考慮するとも記載がありました。

妊娠中は、特に初期が管理が大変です。
胎児モニタリング、抗てんかん薬、葉酸の濃度測定など、病院側の負担も大きいかもしれませんが、なんとかお願いしたいものです。

もし胎児に異常が見つかった場合、そして無脳症などの重度障害の場合は人工妊娠中絶の選択を迫られるかもしれませんが、妊娠する前から、妊娠を諦めるのとは違います。

今回は、まずは「てんかん」のある方でも、妊娠を希望していいんですよ!
という事をお伝えしたくて、書きました。

一部の産科の先生からは、無責任と思われる投稿内容だったかもしれませんが、妊娠を希望する夫婦の強い気持ちも、十分にわかっています。

この内容を参考に、また妊娠を希望するか、妊娠する環境にないのか、再検討いただければいいと思います。
今回の記事がお役に立てれば幸いです。

薬剤師:上田康晴

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