血糖値やHbA1cの正常値とは【糖尿病の治療のまとめ】
こんにちは。
薬剤師の上田康晴です。
・糖尿病の血液検査の正常値
・糖尿病の治療についての情報
・人工透析の情報
・糖尿病に使われる薬の情報
などを、わかりやすく解説します。
血糖値、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の正常値
■空腹時血糖値の正常値 110mg/dL以下
126mg/dL以上で糖尿病域
(110~126mg/dLは境界型)
■ブドウ糖負荷試験の正常値
ブドウ糖を飲んだ2時間後に測定した血糖値
正常値 140mg/dL以下
糖尿病域 200mg/dL以下
(140~200mg/dLは境界型)
■HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6.5%以下
※2012年にJDS規格から、NGSP規格へ
正常値と糖尿病の間の数値は、境界型と呼ばれます。糖尿病の1歩手前ですが、境界域から糖尿病型への悪化率は年間4~6%の報告があります。
4~6%という事は、25人~16人に1人が年間、境界型から糖尿病に悪化していることになります。
これは結構な割合と思いませんか?
しっかり正常値で維持していきましょう。
糖尿病の種類
1型糖尿病
インスリンを作っている「すい臓」の働きが悪く、インスリンが全く作られなくなっているタイプの糖尿病です。
原因ははっきり分かっていませんが、ウイルス感染などをきっかけに起こることもあります。
2型糖尿病
すい臓から分泌されるインスリンの量が少なかったり、インスリンの働きが悪くなっている糖尿病。
日本の糖尿病患者さんの95%以上がこの2型糖尿病です。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは
血液中には酸素などを運ぶ「ヘモグロビン」という成分があります。
「HbA1c」とは血液成分のヘモグロビンに、血液中の糖がくっついたものの割合を示します。
■HbA1cの正常値
HbA1c 6.5%以下
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6.0%ということは、全体の6%が糖化している状態です。
HbA1cが8.0になると、全体のヘモグロビンの内8%が糖化した状態を意味します。
血糖値は時間により数値が大きく変わります。
HbA1cは1~2ヶ月の血糖値の集大成の数値です。
ですので1日の間で数値は変動しません。
ヘモグロビンの寿命は4ヶ月といわれています。
ですので、糖がくっついたヘモグロビン(HbA1c)がなくなるのも、3~4ヶ月くらいかかると思ってください。
そして今日から血糖値を抑えた毎日を送ると、新たに糖化するヘモグロビンは少なくなるので、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は下がっていきます。
でも今日から1~2ヶ月の間、血糖値が高い時間が1日の中で長い場合、新たにヘモグロビンが糖化していくものもあるので、前の糖化ヘモグロビンは消滅していっても、新しく作られる糖化ヘモグロビンが多いとHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は数値が変わらなかったり、数値が上がったりします。
HbA1cが1%低下すると、合併症の危険度が約1/4減少する報告もあります。
(厚生労働省ホームページより参考)
糖尿病の合併症
神経障害で「手足のしびれ」が出たり、糖尿病性の網膜症で目がやられたり(悪化すると失明)、インポテンツ、高血圧、腎不全(人工透析に)、動脈硬化が進み多くの血管トラブルのリスクが高まります。
また糖尿病をお持ちの方はさまざまな感染症にかかりやすく、重症化しやすいといわれています。
これは血糖値が高くなることで、白血球や免疫に関わる細胞の機能が弱くなるためと考えられています。血糖値やHbA1cを下げる対策が有効です!
人工透析(血液透析)とは
糖尿病の合併症として、一番生命に関係するのが腎不全です。
腎臓の働きが悪くなり、体の中の老廃物が溜まりますので、血液を体の外に出して、血液をろ過してキレイにするのが人工透析(血液透析)になります。
年間に約38,000人の方が、新たに透析を始めていると言われます。
血液透析は1週間に3回くらいが標準で、1回あたりの治療時間が3~5時間です。
≪血液透析の合併症≫
・頭痛、吐き気、嘔吐(導入初期に)
・一時的な血圧低下
・筋痙攣
・不整脈
・貧血
・骨代謝異常(骨折しやすい)
・指のしびれ、痛み、バネ指
・肩や背中の痛み、手のしびれ
・動脈硬化(これが原因の四肢のしびれ・麻痺、壊死、眼底出血)
などがあります。
これ以外にも高血圧、肺気腫、悪性腫瘍、感染症、痒みなども発症しやすかったりします。
人工透析になるタイミング
腎臓の働きが10%未満(末期腎不全)になると、人工透析を覚悟しましょう。
ただ腎臓は沈黙の臓器で、少しくらい悪くなっても自覚症状はありません。
腎臓の働きが60%未満になって、やっと「むくみ」などの症状が出はじめ、30%未満で「疲れやすい」などが気になってきます。
腎臓の働きが60%まで落ちてしまうと、進行性の腎臓病になることがほとんどですので、早い段階で腎機能を保つことが重要です。
病院で使われる「糖尿病の内服薬」
即効型インスリン分泌薬
(インスリン分泌)
すい臓に働いてインスリンの分泌量を増やす薬です。
・ファスティック錠 ・スターシス錠
・グルファスト錠 ・シュアポスト錠
スルホニル尿素(SU剤)
(インスリン分泌)
すい臓に働いてインスリンの分泌量を増やす薬です。
・アマリール錠 ・ダオニール錠
・オイグルコン錠 ・グリミクロン錠
・アベマイド錠 ・ジメリン錠
・デアメリンS錠
ビグアナイド(BG剤)
(肝臓での糖新生を抑制)
肝臓や筋肉のインスリンに対する反応を良くする作用、肝臓が糖を作って血液中に送り出すことを抑える作用、消化管からの糖の吸収を抑える作用などのある薬です。
・メトグルコ錠 ・グリコラン錠
・メデット錠 ・ジベトス錠
・ジベトンS錠
αグルコシダーゼ阻害薬
(糖の吸収を抑える)
腸でデンプンや砂糖が吸収されるのを抑え、食後の高血糖を抑える薬です。
・ベイスン錠 ・グルコバイ錠
・セイブル錠
チアゾリジン誘導体
(インスリン抵抗性改善)
インスリンの効きが悪くなっているインスリン抵抗性を改善するお薬です。
・アクトス錠 ・ピオグリタゾン錠
インクレチン関連薬 (DPP-4阻害薬)
「インクレチン」とは、すい臓からのインスリン分泌を促進するホルモンです。
DPP-4阻害薬は、このインクレチンを分解する酵素(DPP-4)の働きを抑えることで、インクレチンを増やすことで、インスリン分泌を助けるお薬です。
・ジャヌビア錠 ・グラクティブ錠
・エクア錠 ・ネシーナ錠
・トラゼンタ錠 ・テネリア錠
・スイニー錠 ・オングリサ錠
・ザファテック錠 ・マリゼブ錠
・ビクトーザ錠 ・バイエッタ錠
・ビデュリオン錠 ・リキスミア錠
・トルリシティ錠
アルドーシス還元酵素阻害剤
(糖尿病の合併症治療薬)
・キネダック錠 ・エパルレスタト錠
・キナルドース錠 ・キネックス錠
糖尿病性神経障害治療薬
(糖尿病の合併症治療薬)
・メキシチールカプセル
糖尿病性腎症治療薬
(糖尿病の合併症治療薬)
・タナトリル錠 ・ニューロタン錠(高血圧の効能もあり)
インスリン注射の種類
超即効型のインスリン注射
注射してから効いてくるまでの時間は10分~20分で早く、持続時間は3~5時間くらい。
・ノボラピッド
・ヒューマログ
・アピドラ
即効型のインスリン注射
注射してから効いてくるまでの時間は30分~1時間で、持続時間は7~8時間くらい。
・ノボリンR
・ヒューマリンR
混合型のインスリン注射
注射してから効いてくるまでの時間は薬により異なり10分~1時間で、持続時間は18~24時間。
・ノボラピッド30ミックス
・ノボラピッド50ミックス
・ノボラピッド70ミックス
・ヒューマログミックス25
・ヒューマログミックス50
・ライゾデグ
・ノボリン30R
・イノレット30R
・ヒューマリン3/7
中間型のインスリン注射
(早からず、遅からず)
注射してから効いてくるまでの時間は薬により多少異なりますが1時間前後で、持続時間は18~24時間。
・ヒューマログN
・ノボリンN
・ヒューマリンN
持続型のインスリン注射
(1日1回タイプ)
注射してから効いてくるまでの時間は1~2時間で、持続時間は24時間。
・ランタス
・ランタスXR
・レベミル
・トレシーバ
糖尿病の予後
糖尿病の発症後、10~15年経過した頃になると約40%の方に微量アルブミン尿(タンパク尿)が認められる報告があり、20~30年後には末期腎不全に至ることが多いと言われています。
日本の透析患者さんは、世界で最も長生きされるという報告があり、10年以上透析を継続されている方は全体の26%を占めているそうです。
(小冊子:腎不全 治療選択とその実際より抜粋)
ぜひ毎日の生活を見直し、血糖値を上げないように気をつけ、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を少しでも低い数値にしておきましょう。
運動も効果的ですので、毎日ウォーキングをして体を動かすようにしてみましょう。
記事参考元
・日本腎臓学会
・日本透析医学会
・日本移植医学会
・厚生労働省ホームページ
・今日の治療薬
コチラの記事も、読んでおくといいです!
本当に伝えたい糖尿の話
記事担当
薬剤師:上田康晴
漢方相談の薬屋
くすりの上田
富山県高岡市大手町11-30
(高岡大仏の真横)